かつて自分を見つめ続ける旅をしていた。
どこまでも続いている舗装された道を
まるで何かに突き動かされているかのように
4つの車輪を持つ愛機に乗って一人走り続けていた。
楽しい休暇を過ごせていたわけでもなく、
目的地に誰かが待っているわけでもなく、
ただひたすら孤独に目の前の道を走り続けたそれは
まさに「旅」だった。
「旅」は突然の終わりを迎えた。
それは守るべきものを守るために。
安住の地にとどまらなければならなかったから。
愛機を手放し、孤独とも決別した。
多忙な中にも安息の日常がそこにあった。
ふと立ち止まった。
今、自分にあるものってなんだ?
旅をしていた時間は孤独ではあったが、
その時間を共有できる仲間がいた。
愛機と語り合える、かけがえのない空間があった。
そして何より、アクティブな自分がいた。
それに引き替え今はどうだ?
「よし、旅に出よう。」
しかし旅に出ようともあの時のような4輪をもつ翼はもうない。
どうする?
駄目だ考えるな。4輪がだめなら2輪だ。
車輪が二つでも愛馬は旅に連れ出してくれるはず。
人生の転機を迎えた時点でその旅は終わったかのように思えていた。
だが今、それはただ自らに言い聞かせていただけだと気付いた。
43歳の秋、大型2輪免許を取得。
バイク歴ゼロ。
旅はまだ終わらない。
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